Googleによる絵文字の文字化について考えてみた

いまさらですがGoogle Japan Blog: 絵文字のユニコード符号化: 符号化提案用のオープンソースデータにあるように,Googleが絵文字のユニコード化を推進するようです.なぜキャリアやメーカではなく,Googleが絵文字をユニコード化しようとしているのでしょうか.そこには,ガラパゴスといわれる特殊性を持ちながら,依然として巨大な日本市場を開国させようとするGoogleの思惑が感じられます.
つい最近になりますが,世界的な不況のあおりを受けてNokiaが日本市場からの撤退を発表しました.Nokiaは確かに端末を提供していましたが,ビジネスパーソンが使うスマートフォンというセグメントを対象としており,多くの日本人にとってケータイとは認識されていなかったことでしょう.ビジネスパーソンと言っても,要はケータイユーザです.コミュニケーションツールとしてケータイは必須であり,スマートフォンは2台目として検討するでしょう.とすると,残念ながらそのセグメントにおける市場規模は極めて小さいと言わざるをえません.
この2台目として選ばれたのがiPhoneです.iPhoneの放つ魅力は多くのGeekを魅了し,彼らやApple信者を獲得することに成功しました.しかし,発売前に期待されたほどの効果はなく,黒船にはなりえませんでした.大多数のケータイユーザはiPhoneに惹かれつつも購入には至りません.なぜでしょうか.
外資が苦戦する理由は単純で,大多数のケータイユーザにとって,絵文字が使えなければ,それはもはやケータイではないのです.絵文字対応はキャリアと協力すれば実現できます.しかしそれは,キャリアが影響力を持つということになり,日本向けにカスタマイズした端末を提供することになります.グローバル企業にとって,このコストは無視できないものでしょう.
Googleは日本市場に参入しようとした先例に学び,Android投入を目前にこの問題を解決しようとしていると考えられます.絵文字をユニコード化してしまえば,対応するフォントデータを用意するだけで絵文字に対応できるからです(もちろん,入力用UIは必要になりますが).Androidを日本市場に投入するからには成功しなくては意味がありません.既存のケータイユーザに,インターネットとの親和性が高くて,メールも“ちゃんと”つかえる端末と認識してもらい,購入してもらうための布石とも言えるでしょう.
Googleの思惑はどうであれこの動きは歓迎すべきものだと思います.絵文字のユニコード化は,絵文字が文字として扱えることを意味するからです.どんな環境でもフォントデータさえあれば絵文字を扱えますし,プログラムに特別なロジックを含める必要もありません.メールやWebだけでなく,あらゆる場所で絵文字が扱えます.フォントを変更すればドコモ,auソフトバンクの絵文字を表示するだけでなく,カスタマイズすることさえ可能です.もちろん,iPhoneでも完璧に絵文字が使えるようになるでしょう(iPhone同士でしか使えないようなその場しのぎではなく).
このように,データとして見たときに,絵文字がもはや単なる文字になるということは非常に大きなインパクトを持っています.既存のケータイと絵文字メールを送受信できるかは,最終的にはキャリアがゲートウェイで絵文字とユニコードの相互変換を行い,ユニコードのままメールを送信するようになる必要がありますが,そこはGoogleの政治力に期待しましょう.